「懐中時計」

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 『才能あるね。 将来、画家になれるかも』  国際コンクールに出したその絵は大賞を受賞し、偉いさんに画家にならないか、と言われた事を話した。  母は「スゴいわね、今日はご馳走ね」と嬉しそうだった。  「将来、俺、絵描きさんになる!」  だけどそんな俺達に、父親は言った。  「絵で喰っていけるほど世の中はあまくねーんだよ。バカヤロウ!」  俺は、その日の夜に、その絵を破り捨てた。  「俺は絶対に親父みたいにならないから!」  それから反抗期に入った俺は親父と口を聞くことは無かった。  そして、親父の時計屋を継ぐはずだった幼い頃の夢はキレイさっぱり無くなって、がむしゃらに絵を描く事に熱中して行った。
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