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男は、牛乳パック2本入った袋をぶら下げて、遠くに見える蜃気楼をぼんやり眺めながら信号待ちをしていた。
時刻はもう午後1時を過ぎているだろう。
スーパーマーケットの椅子で、何かをする訳でも無く、ただ涼しい店内に居たいがために長居してしまったようだ。
暑させいか、空腹感は感じない。
金が惜しい男にとっては、これはかなりの好都合であった。
「お、新台来たのか・・・。」
風が少ないからか、対向車線のパチンコ点の旗が、だらしなく揺れている。
男は遊びたいという強い衝動に駆られた。
しかし、今はお金がいくらあっても惜しい。
「遊びに使ってられない・・・。」
次々と店の中へ入って行く人。
羨ましそうな目で眺めているうちに、信号が青から赤に変わり、また信号待ちする羽目になった。
男は猫背でため息を付いた。
すると突然、聴きなれないが確かに聞き覚えのあるメロディが流れ出した。
その音に男は驚き、何事かと戸惑う。
「あ、メールか!」
数年ぶりに聞いたためか、何か新鮮な気持ちになった。
男は建物の影に回り込み、壁にもたれながら二つ折りの携帯を開いた。
予想通り、新着メールが1通、しかし、送り主の名前が文字化けしていて分からなかった。
男は不審に思いながらも、そのメールを開いた。
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