1.バレンタイン 前編

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ー12日 「かーいりー♪」 いつもより楽しげな様子で、俺の側へと来た兄貴。リビングのソファに座りながら読んでいた本を閉じ、隣に座った兄貴を見る。 「何?」 「明後日はバレンタインデーだね!」 そっか、そういえばそんな時期か、 「…うん、それで?」 俺の問い掛けに対し、相変わらず笑顔の兄貴。…そんなに楽しい事でもあったのか? 「…海璃は、あげる人いないの?」 「…別に特には。ってか…、普通その日にあげるのって女の…「俺には?」 俺の言葉を遮るなり、真面目な声で言う兄貴。 「は?何で俺が兄貴になんか、」 「なんか、…なんか?兄貴に"なんか"…」 思った事を素直に言ったのだが、俺の言葉を聞くなり、落ち込む兄貴。 …なんでだ。 「別に俺があげなくても、学校行けば兄貴女子からいっぱい貰ってるだろ?だって、俺がもっと小さかった時、兄貴に "貰ったの、一緒に食べよっか?" とか言われて一緒に食べた記憶あるし」 小さい頃からモテてたってのも、羨ましいっていうのに。 「…えぇー、それは、海璃がチョコ食べてるのが可愛いからで、本当は貰ってもいらないから捨てるか誰かにあげようと思ってたんだよ?」 「はぁ!?あれ、捨てるつもりだったのかよ!俺に食べさせるためにとっといたって事?」 「うん!食べてるの可愛かったんだよ~?勿論、今もだけどねー」 笑いながら言う、兄貴に。 …ありえねぇ、 本音。 「そういう事で俺が本当に欲しいのは、海璃からのチョコ。他のはどうでもいいんだー、いらないし。海璃がくれるなら他の人からのチョコも全部断るよ?」 「…それはダメだろ、せっかく兄貴のために用意してくれた人がかわいそうだし、」 そんな事で食べ物無駄にするとかバチが当たる、 「!! 海璃は優しいなぁ…、可愛い」 「抱きつくな、…! 離れろ、鬱陶しい」 くっついてきた兄貴を引き剥がす。 「…冷たいな、そんなトコも好きだけど。」 さらっとよく言えたなその言葉。弟に言う台詞じゃないだろ。 …本当にこいつは。
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