1.バレンタイン 前編

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そうやって大地に笑顔で渡されたのは、値段としてはお手頃だが、形は思いっきりハート型の可愛らしいチョコ。 「…いやお前、ふざけてんのか?…チョコに彫られてる字見てみろよ、でかでかと"LOVE"って明らかに女子から男子にだろ。お前は俺と兄貴の事、何だと思ってる?バカか、バカなのか?」 俺は大地に押し付ける形でハートのチョコを返す。 「イテテテ、そんな押すなっての。チョコ割れたらどーすんだよ、そんな怒んなくてもいーだろー? すっげ、バレンタインっぽいじゃんコレ」 「却下」 それ渡したら絶対面倒な事になるだろ… 大体の陸の反応が想像出来てしまうからこそ避けたい。 何で俺はたかがチョコで… 悩みつつ、辺りを見渡していると、ふと目についた。 シンプルで値段は手頃なところ。文字も小さめであまり目立たずに英語では無さそうな外国語で書かれている。 これなら、何が書いてるとか分からないし、いいかな…? そう思い、レジへと持って行こうとすると、またもや大地に止められた。 「何?」 「ついでに俺にはねぇの?」 …いや、期待の目を向けられても困るが。何でそうなる? 疑問の表情で大地を見ていると、 「え?ほら、友チョコってあんじゃん。それだよ!」 「…俺が、大地に?」 俺の一言に喜んで頷く。 「知るか。別にわざわざ俺から貰わなくても誰かから貰えるだろ。毎年、"3つは貰えると思う"って自分で話して…」 「マネージャーと母親と姉な。全て義理!頼む!俺だってもっと他人から貰いたい願望があるんだ。」 「だから、何故それを俺に言う?クラスの女子にでも頼めよ」 正論だろ、? 「はいー?何言ってんの、クラスの女子とかムリに決まってんだろ?俺らのクラスどんだけリア充多いと思ってんの。本命がもういるんだよ、あいつらには。」 "リア充が多いクラス"っていうのも良い事なのか謎だが…。 随分と校則のゆるい高校に入ったものだと今更ながら思う。 「そこまで欲しいなら自分で買えばいいだろ、俺はレジに行く。」 「海璃ぃー!」 腕にしがみついて泣き真似をする大地。コイツのチョコへの執着は何なんだろうか、そこまでするか?普通。 振り切ろうとするが終いには、 「買おうにも今日、金持ってないんだってー!」 「嘘泣きすんな、! 鬱陶しい」
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