1.バレンタイン 前編

9/11
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/408ページ
冷ややかな視線を送って、大地が離れるのを待とうとするも、大地はそんなのお構い無しで離れない。何だコイツ、まさか兄貴と同類か…?何でこんな。いらない所で頑固な意味が分からない。俺はため息をつくと、大地の方へと顔を向ける。 「…分かったよ、一緒に買ってやるから早く持って来い」 結局折れるのは自分の方だ。 「やったー!あんがと海璃ぃー!お前を友達に持った俺は幸せ者だ!」 そう言って、楽しそうにチョコレートコーナーへと大地は戻る。 …ったく、大袈裟な奴、…呆れる。 まぁ、結局アイツのチョコを買ってやろうとしてる俺も、人の事は言えないか。 「海璃ー!! 俺の分コレな!」 チョコを買って貰えるのが本当に嬉しいらしく、大地は満面の笑みでチョコを渡して来る。渡されたチョコを見てみると、値段は兄貴に買う用と同じ位だが、パッケージが随分可愛い。 「……。コレ、お前の趣味か?」 「は?いやいや、どうせなら女の子がくれました感を出してーじゃん? 何かコレ、人気No.1らしくてさー!No.1買っといたら問題ねーだろ!って思って。」 買うの俺だからって…何てモン持って来てんだコイツは…。というか、さっき自分で"友チョコ"って言ってただろ、何で"女子から貰った感"を出したがっているんだろうか。視線を向けるが、チョコを持って来た張本人は、こっちを見るなりウィンク。 「……………。」 若干イラッとしたが、持って来いと言ったのは俺の方であるため仕方ない。やれやれと思いつつも、レジへと向かった。 「ありがとうございましたー!」 笑顔で対応してくれたレジを後にし、辺りを見回すと、遠くの方で大地が手を振っている。どうやら俺がレジに並ぶなり、素早くバレンタインコーナーから離れたらしい。 「…ったく、自分だけ素早く脱出かよ…?」 「いやー、わりわり。ほんとは待ってようと思ったんだけどさー…、レジに並んでる海璃見てたら、一部の女子の視線がね…?」 「女子の視線?」 場違いな俺がレジに並んでて、何かしら言われたりするのは分かるから、俺が見られてたって言うなら仕方ないと思うけど…。別に大地が俺の方見てるからって、女子の視線が来るのは… 「おかしくないんだなぁー…それが。」 「!何で俺の考えてる事…?」 「お前見てれば分かる。結構長い事一緒にいますからね。」
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!