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教室の戸を開けると、思った通りと言うべきか教室内の雰囲気は、明らかにバレンタインモードである。女子同士でのチョコレートの交換、いわゆる"友チョコ"というものは世の中では主流になったらしい。
そんな女子の楽しそうな雰囲気に比べ、男子はと言えば、義理チョコを貰うなり大喜びする奴であったり、最早開き直って普段通りに振る舞っている奴もいる。終いには最終手段なのか何なのか、男子同士で相手にチョコをねだってる奴らもいる。…大地と似たようなのがいる事に若干呆れつつ席に座ると、
「夏目くん!」
不意に呼びかけられ、声のした方へと向き直る。呼ばれた理由が分からずに疑問の表情を浮かべた瞬間、目の前に差し出された紙袋。
「あの…?」
「これクラスの女子から。夏目くんには色々とお世話になってるし、陸先輩にもお世話になってるので。二人で食べて!ね、みんな?」
食べてー、等々
いつの間にかクラスの女子が言う。
「…ありがとう」
笑顔で受け取る。
「いえいえ、それじゃ」
女子は帰って行き、普段通りに戻ったかと思いきや、さっきまで遠くにいた大地が素早く側へと来る。
「ぅおぉ!マジ?海璃チョコ大収穫じゃね!?」
俺よりも楽しげに、大地は紙袋を覗き込む。
「一番興味無さそうなくせに超貰ってんじゃん!モテすぎだろ!」
「…いや、義理だろ。」
「義理にしたってクラスの女子全員からは無ぇだろ!この"リア充クラス"に置いて!」
「…お前、自分のクラスへの認識、それなのか?」
「何でこんなに!?」
スルーかよ、まぁいいけど。
「…俺もよく分かんないけど…、多分何かしら兄貴がらみだろ。何か兄貴随分と顔広いし。この学校にも知らない人いないんじゃ…?」
何故か、昔から兄貴は顔が広い。
小さい時から、兄貴と歩いてると、俺が知らない人でも兄貴は普通に話してたし…
前にそんな日常が不思議で兄貴に聞いた事もあったっけ。
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―――ねー陸、
―――なになにー?どうしたの?
―――…何で陸には、友だち?が、いっぱいいるの?
―――うーん、それは…友達じゃなくて、情報源…かな?
―――? "じょうほうげん"?
―――ふふ、色々と教えてくれる人達の事だよ。
―――…ふーん、じゃあ、陸は"動く本さん"と友だちだね
―――そうだね!海璃は賢いなぁ…!
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