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いつもの流れで抱きついて来ようとする兄貴の行動から素早く距離を取りつつ、相手の次の言葉を促すと。どこか残念がる様子の兄貴。かと言って最近暑いし、こっちだって毎回毎回くっつかれたくは無いわけで。
「え?…あー、何でかっていうとね、…台風で学校休みになるとさ。自宅待機しなきゃだから海璃と一日中一緒にいられる…!……って思って?」
「………………、…へー…、」
「え?ちょっ…と海璃、すっごく興味無さそう…? 反応薄くない?」
思わず冷めた目を向けちゃったのはまぁ、…理由がそんな事だとは全く思ってもいなかったもので。
「あ、そっ、か…俺は嬉しいんだけど、海璃は違うのか…」
俺の反応にしょんぼりするような反応の兄貴。さっきまで楽しげに喋っていたのが急に静かになったらなったで。俺の頭ん中にふと浮かんだのはこんな…
『 (´・ω・`) 』
感じの顔文字?なんだけど。気分の浮き沈み激しいっていうか分かりやす過ぎだと思う、この兄貴。そんな感じでいられるのもそれはそれで面倒っていうか、困るな、って思って。
「……だって、学校休みとかなったら授業遅れて別の日に学校出なきゃ行けなくなりそうだし…、大雨警報とか嫌だし……?」
誤魔化すように思った事を言うと、
「…そっ、か。そういうのは確かにある…か。海璃って真面目でホントいい子だよね…!」
今度は、何故か感動したかのようなテンションで、俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくる相手。
「っわ、?!は?何すんの兄貴、どういう目線だよ…!」
思わず赤い顔で兄貴の手を掴む。
「ー…! あー、なんかもう可愛いなぁ……、」
「かわいくない…!…バカ兄貴、ニヤニヤすんな…!」
「えぇー、?…それはもう海璃が可愛いのがいけないって、この顔は戻せないよ」
「…~っ、」
あぁ言えばこう言うし…。って、さっきのテンションの低さは一体どこいったの、…あれが何、“嵐の前の静けさ”ってやつ…?そんなの天気予報の台風なんかより、目の前の台風(兄貴)の方がよっぽどタチ悪いし…!
台風が来ようと、来なかろうと。どっちにしても大変なのは変わりないんじゃないだろうかと、兄貴の言葉につい思ってしまった。
Fin.
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