節分~夏目家。

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2月3日、節分。 夕飯を食べ終わり、片付けを済ませた時間帯。 豆まきしないとな、そう思い、台所から豆の入った袋を居間へと持ってくる。 何かせっかくお面ついてるし、使った方いっか。そう思い、居間にいる兄貴に、 「じゃあ兄貴、俺鬼の役やるから豆投げ…、」 お面をつけようとするが、それより早く手にあったお面を取り上げられる。随分と俊敏な動き。思わず固まり、 「…え、何?」 そう呟くと、 「海璃の柔肌に豆ぶつけるなんて所業、出来るワケないでしょ!?」 必死に何を言い出すのかと思いきや、言われた言葉に思わず呆れる。 「…はぁ、何…そんな事?別に豆ぶつけられたくらいで怒んないし、そこまで柔じゃないって、たかが豆まきに大袈裟なんだよ兄貴は。」 「"そんな事、"じゃないよ!俺にとっては重要事項!鬼役は俺がやるから海璃が豆投げてね?いい?」 俺の言葉を遮るなり、半ば強引に豆の入った升を渡される。 …いつの間に。 手際よく鬼の面を装着した兄貴は、 「じゃ、奥の部屋からだから、二階から撒こうか?」 鬼の面であるため、表情は見えないが、多分笑顔。 面を着けたまま仕切り出す兄貴に思わず苦笑。 「うあ!海璃笑…、って、面あったら見えない…!」 慌てたかと思いきや残念がる。面を付けてようが兄貴は変わらないらしい。 「…よし、じゃあ上の部屋からだね。海璃まいてー、?」 そう言って、兄貴は駆け出す。 鬼は外、福は内の言葉を言いながら、豆まきを開始する。 「…ふぅ、拾うか」 一通り全ての部屋へと撒き終わり、落ちた豆を回収する事にした。俺はその場にしゃがむ。 「そうだねー、拾って…、」 鬼の面を取った兄貴は笑顔で。額にうっすら汗が見えるが、眼鏡の無い兄貴は、いつもと雰囲気が違い、黙って立っていると何だか格好良く見える。絶対言わないけど…そんな事。 「海璃ー…?どしたの?」 兄貴の方を見つつ、そんな事を考えていると、俺を見た兄貴はそう言う。 立っている兄貴に対し、俺はしゃがんでいるため、兄貴は俺を見下ろす形。何故だか兄貴の顔が若干赤い。
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