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一瞬しか見えなかったがセイラー服の少女が光った?
いや、……明滅した?姿が消えて又あらわれた、……気がした?
少女は母親らしき女性を庇う様に前に立ちふさがり、胸元を押し返しその反動で大きく後ずさった。右手の傘を手ばなしその腕で器用にバランスを保っている。
自転車はブレーキ音をまといながら母娘の間を抜け横断歩道の上に自転車ごと倒れた。転がり滑った少年の頭の先をかすめる様にセダンが何事もないように通り過ぎていく。
「ひゃっ……、」
とたんに首をすくめる。路面を転がり濡れたパーカーに車が巻き上げた水飛沫が、彼のパーカーをより濃いグレーに染めた。
少女は少年に駆け寄り、彼の背中に掌をあて軽く叩く。そして左右に払い少年を起き上がらせる。
「大丈夫?」
「あ……あっ、急に…ありがとう、すみません、バイトが…。大丈夫ですか?」
慌てているのか返す返事は要領を得ない。
「大丈夫、頭とか打ってない?他に痛むところはない?」
少年の服についた泥を払いながら、再び問いかける。
俺はマジェスタを路肩に寄せ歩道に転がる少年のカバンと自転車を起こし、横断歩道の2人に声を掛けた。
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