ep.01

7/18
前へ
/25ページ
次へ
「いつまでもそこにいると渋滞ができてしまうぞ?とりあえずコッチに。」 2人を呼び戻すと後続の車を先に促し、自転車をガードレールに立てかける。手に持ったカバンを少年に差し出しながら 「頭ついいててよかったな少年?もう少しで体とサヨナラしてたぞ。それにしても信号無視とはなぁ…。もう赤色に代わってただろ?」 「…スミマセン、急いでいたもので。」 「謝るのはコッチじゃないだろ?」 首をめぐらして別の方向を見る。視線の先では慌てた母親が雨に濡れた少女をハンカチで拭いている。少女は母親に相槌を打ちながら目を細め、こちらを見ている。 「…にしてもだ少年。急ぐにしても自転車で車に突っ込んでも勝負にならんだろ、結果は見えてる。ドMにしても過ぎるぞ。」 「はい、それはわかってるんですが…。僕もそんな気はなかったんですが、あの時は大丈夫に思えて。それにペダルが軽くて…いや、勝手にペダルが回って。すごい勢いで…」 「オイオイ、君が走ってきたのは平坦な道だろ?しかも雨が降って渋滞してるんだからスピードも出せやしないだろ?下り坂じゃあるまいし。」 「ホントに本当に、僕の踏み込む前にペダルが勝手に回たんですってば!」  
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加