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苦笑いしながら話を聞く俺は、必死に説明する少年の首に腕を回し、
「まぁいいさ。さっ、2人に謝って来いよ。」
女性2人に向けてその躰を前に押し出しす。少年はこちらを2度3度振り返り、その母娘の元に向かう。たどり着いた先で深々と頭を下げながら謝罪している。
離れているここまで、母親のヒステリックな声が聞こえ、怯えた少年はペコペコと何度も頭を下げている。
まくし立てる母親を諫めて、手を引いて少女が歩道を進んでいく。
「もう、なんでよ? もし除け切れなければ事故よ。そのうえ車に撥ねられたら救急車で病院でベットで………etc」
「ハイハイ、ママ。でもね、私もママも無事なのよ?彼はビショビショだし車にも轢かれかけて大変な目にもあったんだし。」
「でも、でもね…、」
「こんなに泣きそうになって謝ってる彼をこれ以上責めたりしないで。学校の時間だし。」
未だ不満げな顔の母親に聞こえる様に声を張り、慌てて少年が頭を下げる。
「本当に申し訳ありませんでした!」
「よかったな少年、感謝しろ。」
俺は十字を切り胸元で掌を組み合わせる。
母親はそうよね仕方ないわよね、などと小声で言いながら信号に並ぶ。
信号が青に変わった横断歩道を母親の手を引き少女が進む。途中、少女が振り返り
「もう、雨の日に2人乗りは駄目よ!」
それだけ言うと信号を渡りその先に進んでいく。
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