ep.01

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俺は少年と別れて病院に向かった。雨も止んで空が明るくなってきた。午後には天候も頭痛も回復するだろう。 病院の駐車スペースは地下にある。駐車場警備員に指示され螺旋状のスロープを地下に向かう。 スロープというやつは、登るのも下るのも感覚がおかしくなる。クルクルと回るうちに酔った様な感覚に陥る。寝不足もたたっているのだろうが、視界の先が暗く狭くなっていく。 地下3階にはまだつかないのだろうか? ようやくたどり着くと、すでに半分ほど駐車された車が止まっている。ただし、車はあるが人の気配がしない。 病院という環境はただでさえ“ 生 ”より“ 死 ”をイメージしやすいが、今のこの雰囲気は何かおかしな感じがする。空気の淀みが服を通り越して体に絡みついいてくる。 スペースの奥の方では蛍光灯が点滅している。明かりが消えた瞬間に光の届かない闇から得体の知れないものが襲ってきそうで、視線を外す。 マジェスタから降りてスタンドを立てキーを抜く。 カラカラカラ…… 背後の暗闇から聞き覚えがある軽い音がして、ギクリっとする。見なくても何の音か理解できる、嫌な記憶が頭をかすめる。小さな車輪が転がる音が密閉された地下空間に反響して不安定な感情を逆なでする。  
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