ep.01

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間近で見るその姿はまさに怪物だ。大きく広げた翼は廊下いっぱいに広がり俺の視界を覆う。 恐怖で一気に感覚が研ぎ澄まされる。思考が加速し、まわりの時間が緩やかに流れていく。 この感覚は久しぶりだ。 体中の血が駆け巡る。 沸騰し蒸発寸前にまで高温になった血が俺の体を巡る。 つま先から頭の天辺まで、幾度もいくども流れ巡る。 何億という細胞が呼吸をするように躍動し、そのすべてを知覚する。 しかし、 いつだって、躰は動かせない…。 すべてを見渡せる俺の視覚は、すべてを覆いつくす黒い怪物で埋め尽くされる。 およそ3メートル、見開いた目で凝視する俺。 あと2メートル、捕食の姿勢を取り鋭い鉤爪が俺に向けられる。 残り1メートル、 「ゴフッ、すみません、エレベータ乗らないなら…」 横からか掛けられた声。瞬間、夢から覚めたように視界が開ける。
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