嵐の後

18/37
3285人が本棚に入れています
本棚に追加
/1822ページ
「確かに、何故でございましょうな? 改めて考えてみると、自分でもはっきりとした理由は分かりませぬ」 「何じゃそれは」 信長が呆れたように眉を寄せると、姫はふふっと小さく笑ってから、どこか儚げな面持ちで遠くを眺めた。 「ただ──強いて申し上げるのならば、殿に、希望を感じたからでしょうか」 「希望、とな」 「あなた様の行動を見、言葉を聞き、この国を豊かになさりたいというお考えを知り…。 このお方にならば、己の一生を託しても構わぬと、そう思い及んだのでございます」 「──」 「人の心の機微は複雑なものでございます故、あまり上手くは申し上げられませぬが、 私はきっと、織田信長という男の持つ、未知なる可能性に惹かれているのだと思います」 「…お濃…」
/1822ページ

最初のコメントを投稿しよう!