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「確かに、何故でございましょうな? 改めて考えてみると、自分でもはっきりとした理由は分かりませぬ」
「何じゃそれは」
信長が呆れたように眉を寄せると、姫はふふっと小さく笑ってから、どこか儚げな面持ちで遠くを眺めた。
「ただ──強いて申し上げるのならば、殿に、希望を感じたからでしょうか」
「希望、とな」
「あなた様の行動を見、言葉を聞き、この国を豊かになさりたいというお考えを知り…。
このお方にならば、己の一生を託しても構わぬと、そう思い及んだのでございます」
「──」
「人の心の機微は複雑なものでございます故、あまり上手くは申し上げられませぬが、
私はきっと、織田信長という男の持つ、未知なる可能性に惹かれているのだと思います」
「…お濃…」
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