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彼女たちの反応を見て、千代山は織田家の威光を見せつけてやったと言わんばかりに、小さくほくそ笑んでいた。
やがて千代山は軽く咳払いをすると
「姫君様。一先(ひとま)ずお茵の方へ」
いつまでも室内を見回している帰蝶に着座を促した。
帰蝶が慌てて上座に着くと、三保野たちも部屋の脇に退き、整然と控えてゆく。
千代山は三保野たちが静まるのを見届けた後
「この度はまことに、祝着に存じ奉ります。私、織田家老女・千代山と申しまする」
帰蝶に対して恭しく平伏した。
「御前様のご命により、暫しの間、姫君様のお世話をつかまつります故、よろしくお願い致します」
「御前様とは…先程お会いした、土田御前様のことですか?」
「左様にございます。姫君様がご不自由な思いをせぬよう、よくよくお仕え申し上げよとの、御前様のお心遣いにございます」
千代山の言葉を聞き、帰蝶は思わずはにかんだ。
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