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「姫様、そろそろ中へお入り下さいませ。お手習いの最中でございますよ」
縁台の袂から侍女の三保野が呼びかけて来る。
しかし帰蝶は、まるで意に介さずといった面持ちで、降りやむことを知らない風花と戯れ続けていた。
一つのことに夢中になると、なかなかそこから抜け出せない性分である。
三保野は痺れを切らしたように帰蝶の側まで歩み寄ると
「姫様、お風邪を召されまする。早ようお部屋の中へ」
やや厳しい声色で入室を促した。
帰蝶ははっと我に返ったように三保野を認めると、幼いが端麗なその面差しに、無邪気な微笑を浮かべた。
「見て三保野。こんなに陽光が照っているというのに、雪が降っておる──。美濃では珍しい事よのう」
「雪ではございませぬ。風花と申すのですよ」
「かざはな?」
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