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「されど姫様には、この短き間に主だった者たちへの目通り、また織田家の仕来たりや習わしなど、
色々とお覚えいただく事も多ございます故、くれぐれもお気を抜かれませぬよう」
「心得ましてございます」
帰蝶は頷くと
「…千代山殿」
「はい」
「信長殿はいつ戻って参られるのでしょう? さすがに、明日の婚礼までには戻って参られましょうな?」
今最も気になることを率直に訊ねた。
千代山の片眉が微かに波うつ。
「…それは…勿論でございます」
「本当ですか?」
「…はい。な、何せ、ご自身のご婚礼なのですから。…きっと戻って参られましょう」
目を泳がせながら言う彼女の言葉には、まるで説得力がなかった。
帰蝶の小さな胸に徒ならぬ不安が押し寄せる。
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