風花

10/20
前へ
/1822ページ
次へ
「姫様にはご幼少の頃より仕えておりまするが、和歌、茶の湯、花と、姫様は数々の素養(そよう)にも優れたる御秀才(ごしゅうさい)にございます。また乗馬や(やり)のお腕も──」 「馬は人並み程度じゃ。それに槍がお得意なのは父上様であって、私ではない」 「これは、失礼を致しました」 三保野はあっとなって低頭(ていとう)する。 「殿御(とのご)でもあるまいに、何故(なにゆえ) 皆は、私に文武両道を求めるのであろうか」 先程までの明るい表情から一転、帰蝶は不快そうに顔を(しか)めた。 三保野の言う通り、帰蝶は幼い頃から優秀な姫であった。 学問や数々の素養だけでなく、洞察力にも秀でており 《 まことに惜しい事じゃ。帰蝶が男であったならば、この美濃の名将になったであろうに 》 と道三も口癖のように言う程、よく出来た姫であった。
/1822ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3316人が本棚に入れています
本棚に追加