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「姫様にはご幼少の頃より仕えておりまするが、和歌、茶の湯、花と、姫様は数々の素養にも優れたる御秀才にございます。また乗馬や槍のお腕も──」
「馬は人並み程度じゃ。それに槍がお得意なのは父上様であって、私ではない」
「これは、失礼を致しました」
三保野はあっとなって低頭する。
「殿御でもあるまいに、何故 皆は、私に文武両道を求めるのであろうか」
先程までの明るい表情から一転、帰蝶は不快そうに顔を顰めた。
三保野の言う通り、帰蝶は幼い頃から優秀な姫であった。
学問や数々の素養だけでなく、洞察力にも秀でており
《 まことに惜しい事じゃ。帰蝶が男であったならば、この美濃の名将になったであろうに 》
と道三も口癖のように言う程、よく出来た姫であった。
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