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「殿より大切なお話を預かって参られた由。おめもじあそばされますか?」
「無論です。すぐにこちらへ」
帰蝶は顔をほころばせると、座っていた茵を空けて、上座の脇に座り直した。
三保野や他の侍女たちも素早く部屋の端に控え、小見の方が部屋へ入って来たのと同時に、さっと頭を垂れた。
「母上様にはご機嫌麗しゅう」
上座の茵に腰を据える母に帰蝶が笑んで告げると
「あなたに悪い話を持って参りました」
小見の方は開口一番にそう言った。
途端に、笠松の窘めるような眼差しが小見の方の横顔に飛んだ。
「お方様、そのような仰り方をなさっては…」
「良いではありませぬか。母と娘の間で何を遠慮する事があるのです」
「されど、姫様にはおめでたき事にございます故」
笠松の言葉を聞き、帰蝶は目をはじくようにして母を見た。
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