風花

13/20
前へ
/1822ページ
次へ
「殿より大切なお話を預かって参られた(よし)。おめもじあそばされますか?」 「無論です。すぐにこちらへ」 帰蝶は顔をほころばせると、座っていた(しとね)を空けて、上座の脇に座り直した。 三保野や他の侍女たちも素早く部屋の端に控え、小見の方が部屋へ入って来たのと同時に、さっと(こうべ)()れた。 「母上様にはご機嫌麗(きげんうるわ)しゅう」 上座の茵に腰を据える母に帰蝶が笑んで告げると 「あなたに悪い話を持って参りました」 小見の方は開口一番にそう言った。 途端に、笠松の(たしな)めるような眼差(まなざ)しが小見の方の横顔に飛んだ。 「お方様、そのような(おっしゃ)り方をなさっては…」 「良いではありませぬか。母と娘の間で何を遠慮する事があるのです」 「されど、姫様にはおめでたき事にございます故」 笠松の言葉を聞き、帰蝶は目をはじくようにして母を見た。
/1822ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3316人が本棚に入れています
本棚に追加