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「おめでたき事とは、いったい何なのでございます?」
興味をそそられたのか、帰蝶がやや前のめりになって訊くと
「…あなたの縁組が決まったのですよ」
小見の方は囁くような声量で告げた。
「縁組?」
「お相手は、尾張の織田信秀殿のご嫡男じゃ」
「織田信秀殿のご嫡男」
母の言葉を帰蝶がおうむ返しに呟いていると
「まさか、信長様にございますか!? うつけとのお噂の高い、あの!?」
三保野が堪らなくなったように叫んだ。
小見の方は、数分前の自分と同じ反応を見せる三保野に「そうじゃ」と頷き、再び姫の顔を見据えた。
「三保野の申す通り、あなたの夫になろう織田三郎信長殿は、尾張の大うつけと嘲られるお人。
母としては、大切な姫をそのような殿御に嫁がせとうはありませぬが……全ては殿のご意向なのです」
「父上様の」
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