風花

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「信長殿の傅役(もりやく)・平手政秀殿から内々の申し入れがあり、殿もそれにご興味を(しめ)されたご様子じゃ」 「──」 「(なげ)かわしき事よのう。この戦乱の世にては、おなごは政略の道具として扱われるのが(つね)。 だからこそあなたには、出来るだけ優れたる伴侶(はんりょ)を得てほしいと願っておりましたのに」 小見の方は口の両端を(ゆが)めながら、如何(いか)にも口惜しそうに(つぶやい)た。 が、当の帰蝶は実に淡々とした面持ちである。 驚いた様子も、ましてや悲しむ様子すらも見せていなかった。 《 あの父がどうして自分を、そのようなうつけ者に嫁がせようとしているのか── 》 (むし)ろ、そちらの方が気になって仕方なかった。 道三は自分の利益にならない事はしない人間である。
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