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が、再びその目を開いた時、あの傷付いたメジロは植え込みの陰から姿を消していた。
「 !? 」
帰蝶は思わず駆け寄って花壇や茂みの周りを確認してみたが、メジロの姿はどこにもなかった。
急に羽の傷が治って空に飛びたった可能性は極めて低いだろう…。
とすると考えられる事は一つしかない。
『 残酷な事。鳥が飼い猫の餌になろうはずもないのに 』
帰蝶は大きな虚さに襲われて、深い溜め息を吐いた。
もし傷を負ったのが足や嘴であったら。
もし後数秒早く帰蝶の手の中に包まれていたら。
あのメジロも茶々丸の玩具にならずに済んだであろうに。
弱ったところを捕まるとは何と不運な──
そう心の中で呟いていた帰蝶の双眼が、突として大きく見開かれた。
「……そうか。故に父上様は…」
帰蝶はその美しい面差しに、確信めいた微笑を浮かべていた。
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