嵐の後

16/37
3288人が本棚に入れています
本棚に追加
/1822ページ
「御意にございます。 もしもこの先、私が殿を裏切るような真似をした時は──どうぞ、その刀で私を刺して下さいませ」 「……」 姫の大胆な発言に初めは呆気に取られていた信長だが、暫しの間の後、口の両端をゆるやかにつり上げた。 「儂に、己の命を託してまで忠誠を誓うとは、なかなかに見上げた心意気じゃ。 なれどそなた、それが何を意味しているのか、しかと分かっておるのであろうのう?」 濃姫は答えず、宙に視線を遊ばせている。 「儂の側に付くということは、即ち、あの蝮の親父殿を…斎藤家を捨てるということなのだぞ?」 「……」 「そなたにそんな真似が出来るのか?」 目尻に皺を寄せながら、余裕を交えた口調で信長が訊くと 「あなた様が私を信頼して下さるのであれば──ええ、喜んでそう致しましょう」 濃姫は迷いもなく言い放った。
/1822ページ

最初のコメントを投稿しよう!