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「まずはこの尾張からじゃ。この国を我が物にせぬことには話が始まらぬ」
信長は障子をピシャリと閉めると、どこか生き生きとした表情で濃姫を見やった。
「先は長いぞお濃。日の本がこの手におさまる頃には、儂もそなたも、きっと年寄りになっておろう。
ましてや世界へ乗り出す頃には、棺桶に片足を突っ込んでおるやもしれぬ」
「その時には、私が杖(つえ)の代わりになって、殿と共に異国の地を巡って差し上げまする」
「言うてくれるのう。なれど、我らはたった一つしか年が違わぬのじゃ。
その時にはそなたとて、儂と同じく老体になっておろう」
「でしたら、私は老いても尚 若人と同じくらいに歩けるよう、これから足腰を鍛えまする。
濃は、最後の最後まであなた様に付いて行くと、心に決めております故」
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