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「織田家の信長殿といえば、“ 尾張の大うつけ ” と嘲られるお方。
那古屋城主とは思えぬような異様な風体の上、粗暴な振る舞いが絶えず家臣たちも皆手を焼いているとか?
そのようなお方に帰蝶を嫁がせて、本当に良いものでございましょうやら」
不安そうに眉をひそめる妻を見て、道三はその脂ぎった面に、深い笑い皺を寄せた。
「案ずるには及ばぬ。うつけとは申せ、おなごの帰蝶に…ましてや、この儂の娘に手をかけるような愚かな真似はすまい」
「いくら “ 美濃の蝮” と恐れられる殿でも、相手は大うつけ。左様な理屈が通じる相手ではございますまい」
「それでもいずれは織田家の当主となる男じゃ。
織田と同盟を結べば、長らく続いてきた尾張との小競り合いから解放される上、
駿河・遠江の今川義元ら、東国の勢いを抑えることも夢ではなかろう」
「……」
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