掌の宝物

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 祖父母は優しく微笑む。息子と嫁、それから可愛い孫娘が遊びに来てくれたのだ。  縁側に祖父母は仲良く座ると、庭に植えたさくらんぼが小さな赤い実をつけ始めている。山からおりてきた野鳥が摘まんでは、嬉しげに鳴いていた。  母親の後ろをくるくる回っていた孫娘は、母が忙しくて相手をしてくれないから、祖母の近くに走り寄る。そして、彼女のしわくちゃな指を飾る指輪を凝視した。 「あらあら、なあに?」 「おばあちゃんのそれって、お母さんのと違うね」  祖母の指輪は、装飾もないシンプルな金の輪。少女の母にはダイヤがついた指輪。  輝く宝石がついてない形が違う指輪は、少女の目にはとても不思議だった。 「そうねえ。同じものじゃないわね」  のんびり答える祖母の隣に並ぶ祖父は、眉を下げて二人の会話を聞いていた。お茶を飲んで、落ち着かない様子で耳を澄ませる。
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