第2章

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その声と同時に俺は椅子から立ち上がった。 離れているが、ハルは しっかりと俺を見た。 「はい…………なっちゃん、お母さんの分まで愛してくれてありがとう」 ハル………… ハルは、俺の気持ちをちゃんと受け取っていたんだ……… 短い一言の中に、ハルの気持ちが乗せられていた。 思わず、奥歯を噛みしめる。 鼻の奥がつんとした。 卒業証書を受け取るために校長先生の前に進んだハルの姿がぼやけていく。 くすん……くすん……俺の周りからは、鼻を啜る音が聞こえ始めた。 ハルの姿を見るため、右手の甲でぐいっと目を擦り また前を向く。 しっかりとハルの姿を目に焼きつけるように。 ハル、泣いてるかな!? 卒業証書を受け取り、お母さんに花を持ってきていた前の子たちも みんな結構泣いてたな……そんなことを思いながら…… だか、俺の予想に反し ハルは泣いていなかった。 俺に黄色いチューリップを差し出し、満面の笑顔でこう言った。 「なっちゃん、大好き」
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