第1章

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ボクは恋している。僕と彼女は相思相愛だ。 長くのばした髪をスッとすきながら、鏡にうつる顔を見つめながら、フフッと微笑む。ボクは今日も綺麗だ。女の子だって負けないくらいの美貌がそこにある。 ボクと彼女は、子供の頃から長い時間をかけて気持ちを紡いできた。きっと世界中の誰よりも、ボクは彼女のことを理解し愛しているし、彼女もそうであってほしいと思う。そこは彼女の気持ちを聞いてみないとわからない、けど、恥ずかしいから聞けない。こういうウブな関係がボクは好きだ。 「ユマっ!! あんた、また、なんて、格好してるのよ!! 近所の人になんて言われてるか、あんた、わかってるの!?」 母の金切り声がうっとうしくて、ボクは耳をふさいだ。うるさい、ちょっと黙ってほしい。苛立ちを押さえながら言う。 「ボクはもう、大人だ。二十歳だ。どんな格好しようがボクの勝手だろ」 長くのばした髪に、丁寧に手入れした爪、かわいらしいスカートをひらめかせ、睨みつける母親を見返す。 「あんたは、男の子でしょ、大人とか、子供とか関係ないのよ。あんたが女の子の格好して出かけたりするせいで、私まで頭がおかしいみたいに思われるのよ!! ちょっとは親の私のことを考えて」 「うるさい、これがボクなんだよ。こうしないと彼女が世界に出てこられないんだ」 「彼女。彼女。彼女ーって!? そんなのどこにもいないじゃない。空想に浸ってるんじゃないわよ」 「空想じゃない。彼女はここにいる。ボクが彼女になるんだ」 自分の胸に手を当てて、叫ぶけれど、は母親は髪の毛をめちゃくちゃにかきむしるだけだ。どうせ、理解するつもりなんてないくせに口出しなんてしないでほしい。 「もう、いやよ。アンタみたいな子、生まれてこなければよかった!!」 ブチリと糸が切れる音がした。理性のタガが外れて、本能が駆け抜ける。カハァとは母親の喘ぎ声が聞こえた。 「ボクだって、アンタみたいな親のもとに生まれたかったけじゃない。子供の頃からずっと、ずーっとやりたいことや、目標を押し付けて、勝手な理想像を作り上げる。一度でもボクの意見を聞いたかよ。ボクの目を見たのかよ!!」 「……ぁあ!? うっ!!」 は母親の瞳がグラグラと揺らめき、ぺしぺしと手を叩く。ボクは怒りに任せて、母親の首を締め上げていた。殺してやりたいのに、なんで殺せないんだろう。母親を壁に叩きつけ、
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