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家を飛び出した。真っ暗な夜空には星も見えない。曇っているのか、それならボクの心も同じだ。いつも曇って先が見えない。
「うん、うん、大丈夫だよ。ボクは大丈夫、心配してくれてありがとう」
彼女がボクに心配してくれている、曇りの中、唯一で形を持つ彼女、綺麗で、可愛くて、ボクの愛おしい彼女。彼女の言葉だけで落ち込んだ気持ちを奮い立たせることができる。
「大丈夫、きっと大丈夫だよ。時間ならたくさんあるんだ。君を、この世界に生み出してあげる」
ボクは、両手を広げて笑った。
「ハハッ、ハハハハハ、ハッ、ハハハハハハハハハハ、きっとボクは君をこの世界の一員にしてあげる。そうなったらボクは死んでもいい!!」
子供の頃から、ずっと『自分』というものがなかった。親や教師や友達は、勝手にボクに理想像を押し付ける。
まっぴらごめんだった。なにもかも破壊してしまいたい。『自分』なんていらない。
「愛してるっ!! 愛してる!! 愛してるっーーー!! だから、ボクは君をこの世界に生み出したい。きっとみんなが君のことを愛おしい女神として、崇めるだろう。新しい神として、救世主として、新しい世界の神になる!!」
ボクは、いらない。どこにもいらない。
だって、ボクはどこにもいないんだから。
運動はまったくできない。お勉強はいつも最下位。やることなすこと、全部、裏目に出ていく。誰もがボクに勝手に期待して、勝手に幻滅していく。
ボクは、どこにもいない。存在していたくないから、彼女の身代わりになって消滅してしまいたい。
「きっと彼女なら、この世界のくだらない規律なんかを壊してくれるはずだ。くだらない人間なんてみんな、みんな、いなくなってしまうんだ」
そしたら、もう誰もボクと彼女のことを否定したりしない。
「早く、早く、早く、一分一秒でも早く!!」
彼女をこの世界に!!
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