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「ねえ、ねえってば!
そろそろ起きてよお兄ちゃん。
もうホームルーム、
とっくに終わっちゃったよ?」
「う~ん?」
俺は、小さくうめき、それから薄く目を開く。
すると俺の顔を、一人の女の子がのぞきこんでいるのが見えた。
綺麗に染まった茶髪のショートカットに、困ったような、それでいて愛らしい笑顔。
淡いプリーツスカートにセーラー服を着た女の子。
俺の妹、速水真理だ。
俺は、妹の真理を見上げて、
「……どした?」
そう聞くと、真理はかわいらしい細い眉根を少しだけ細める。
「もぉ~、どしたじゃないでしょ~。
お兄ちゃんってば、
さっきから呼んでるのに
全然起きてくれないんだもん。
クラスの人に聞いたら
五時間目から寝たままだって言うし」
「……へ?五時間目から?って、いま何時?」
「三時五十分」
「うお?ホームルーム終わってんじゃん」
「だからそう言ってんじゃん」
と、真理がますます呆れたような顔で言う。
それに俺は、
「嘘だろ?」
驚いて、身体を起こす。
それから周囲を見回す。
ちなみに俺が寝たのは、五時間目の家庭科の授業のはずだ。
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