11月25日

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「奏が払ってくれんの? 滞納してる芽衣子の家賃」 琉偉さんは目の前の奏に向かって、そう訊ねる。家賃さえ入れば、誰が支払おうと関係ない……そんな雰囲気が出ていた。 琉偉さんの言葉で状況を把握したらしい奏が、芽衣子に向かって小さな声を出した。 「家賃と生活費、親からちゃんと入金されているでしょう? その他におこづかいだって……」 「うるさいな、奏が払えば解決でしょ!」 芽衣子が奏を睨みつけると、奏はグッと言葉を飲み込む。そして諦めたようにため息をつき、琉偉さんに家賃の詳細を聞いていた。 それを見た芽衣子は満足そうに笑い、鼻歌混じりにリビングを出ていった。 「なに、奏が肩代わりすんの?お人好しだな」 佳穂さんが、ソファーに寝転びながら呟く。奏と芽衣子の異常な力関係に気づかないのは、鈍感な佳穂さんぐらいだな。 「あれ?紗瑛さんと透哉さんは?」 オレが部屋を見回しながら問うと、将勝さんが読みかけの本に目を通しながら答えた。 「透哉は自室、紗瑛ちゃんは夜までバイトみたいだね」 「そうスか」 そう言いながら、壁にかかったホワイトボードに目をやった。ここには、それぞれの本日の予定と家事当番表が書かれることになっている。 紗瑛さんの欄には、22時までアルバイトとなっている。ということは、晩飯もいらないんだな。 「今日オレが晩飯担当なんですけど、紗瑛さん以外は晩飯用意して大丈夫っスか?」 リビングにいた全員に問う。全員が頷く中、「よっしゃ、今日は優飛が当番か」と佳穂さんがガッツポーズをするのが見えた。 オレ達はある程度生活費を出し合い、炊事は協力して生活している。食材や手間を考えると、まとめて作ってしまった方が楽だからだ。 別で予定がある人間や食べたいものがある人間は個々に用意するけれど、基本は誰か1人が当番となり大量の料理を作る形をとっている。
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