11月25日

4/17

679人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
調理を終え、テーブルに6人分の料理を並べる。奏だけは自室で食べたがるから、いつも通り1人分はキッチンに置いておいた。 夕飯を食べて片付けた後、リビングに残っているのは、佳穂さん、琉偉さん、将勝さん、芽衣子、オレの5人だけだった。 透哉さんは夕食をたらふく食べて「眠い」と自室に入ってしまったし、奏は夕食を取りに来て以降現れていない。 「紗瑛、遅いな。明日の講義のレジュメ確認したかったんだけど」 紗瑛さんと同学部の佳穂さんが、スマホを見ながらため息をつく。もう時間はすでに23時半を過ぎていた。 いつもは22時半には帰ってきている紗瑛さんが、この時間まで帰ってこないなんて……あまりにも遅すぎる。 「オレ、電話してみますよ」 流石に心配になって、オレは紗瑛さんに電話をかけた。応答があったのは、何コールかの後。 「もしもし」 「あ、紗瑛さん。今どこです?」 「ちょうど電話しようと思ってたの。……今ね、旧時計塔校舎にいるんだ」 紗瑛さんの声には抑揚がなく、淡々とした返答だった。 旧時計塔校舎って……大学のあの旧時計塔校舎だよな?どうしてこんな夜に、そんなところに? その疑問を口に出す前に、紗瑛さんが言葉を重ねた。 「今からみんなも来てくれないかな。旧時計塔校舎の屋上。思い出深いところだよね、みんなにとっても」 電話口で、フフっと笑う声が聞こえた。 含みを見せるその言い方に、ぞくりと背筋が凍る。 「待ってるから、みんなで来て。この場所の意味、わかるでしょう」 その声を最後に、電話は切れた。オレはスマホを耳に当てたまま、指先ひとつ動かせず。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

679人が本棚に入れています
本棚に追加