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「わかったような口聞くな!」
大声とともに、佳穂さんが紗瑛さんに向かってパイプを振り下ろす。そのパイプは紗瑛さんの左側頭部に直撃し、紗瑛さんは激しくよろめいた。
その瞬間、紗瑛さんの手を離れて転がるスマホ。芽衣子が即座にソレに飛びつき、両手で握りしめて紗瑛さんから離れた。
頬を伝う血液に驚く紗瑛さん。
「あ……」
我に返った佳穂さんが、目を見開きながらパイプを取り落とした。本当は殴るつもりもなかったんだろうけど、感情の高ぶりで自分を抑えられなかったらしい。
「ア、アンタが悪いんだから……いつもアタシのこと勝手に美化してイイ人扱いして……」
後退りながら、佳穂さんは紗瑛さんを睨む。そして、両手で頭を抱え、涙ながらに言った。
「もう消えてよ、頼むから。アタシ、ずっとずっとアンタのこと大嫌いだった」
「……へぇ、仲良いと思ってたのに……それが佳穂さんの本音だったんだ……」
奏が後ろでぼそっと呟いたのが聞こえた。振り向くと、奏が口を歪めて笑っていた。
琉偉さんが無表情のまま佳穂さんの傍を通り、紗瑛さんに向かって足を進める。そして、倒れている紗瑛さんの腕を掴んで立ち上がらせた。
「紗瑛、大丈夫?」
心配するかのような琉偉さんの仕草に、紗瑛さんが少し安心したように小さくうなずく。すると「それは良かった」と微笑んでみせた。
そして、紗瑛さんの手を引き、屋上の淵まで連れていく。それ以外の全員が、何が起こっているのかわからずただ2人を見つめていた。
琉偉さんはそこで足を止め、下を覗き込む。
「紗瑛、樹はここから落ちて死んだんだよね?」
紗瑛さんさえも琉偉さんの意図がわからないようで、困惑している様子だった。が、肯定の意を込めて頷いた。
その直後……
琉偉さんは笑顔のまま、紗瑛さんの背中をトンと押した。紗瑛さんはバランスを崩し、前のめりに倒れかかる。でも、そこにはもう“足場”はなく、紗瑛さんの体は宙に浮いた。
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