677人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
オレは死体のそばに屈み、ただ呆然と彼女の亡骸を見つめるしかできなかった。なにも考えられない、考えたくない。
そんなオレに、将勝さんが声をかけた。
「仕方なかった。優飛の判断は正しかったよ」
将勝さんの言葉は、オレには何一つ響かなかった。
仕方なかった?正しかった?そんなわけないだろう。オレは、自分の保身のために大切な人の手を離したんだから。
……正直、樹の時は自殺だったから、自分を正当化させるのは簡単だった。樹は勝手に事故を起こし、勝手に自殺したんだ。
でも、今回の紗瑛さんは違う。確実にオレ達が殺したから。
「どうする?」
琉偉さんが、死体を見ながら将勝さんにそう問いかけていた。将勝さんなら、なんとか打開策を出せるだろうという期待を込めてだと思う。
将勝さんは口に手を当てて深く考えた後、冷静な目でこう言った。
「頭は潰れているから佳穂が殴ったあとはわからないだろうけど、琉偉が背中を押してしまっているし、優飛も手を掴んだ。樹と違って、自殺と判断してもらうのは無理だろうな」
「あー、そっか。ごめんねー」
琉偉さんが、やる気のない声で謝罪する。
「なら、死体ごと隠すしかねぇだろ」
そう言ったのは透哉さん。それに対し、「簡単にいうけどな……」と将勝さんが、透哉さんを睨みながらため息をついた。
将勝さんの言いたいことはわかる。人1人の死体を運ぶだけでも難しいのに、辺り一面に血と臓物だらけ。いくら7人で協力したって、朝までに全て跡形もなく片付けるなんて至難の業だ。
最初のコメントを投稿しよう!