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目が覚めたのは、窓から射し込む眩しい朝日に照らされたからだった。
体を起こしながら辺りを見渡すと、自分がSのリビングに寝転がっていたことがわかった。でも、そこは人が住んでいるような様子もなく、分厚い埃がたまっている。
手に持っていたスマホは充電が切れてしまっていて……今が何時かどころか、今日が何月何日かさえもわからない。
「紗瑛さん?」
Sの中を1人で彷徨い歩く。キッチン、浴室、トイレ。どこも埃だらけで、水道もガスも通っていない。
みんなで閉じ込められていたあの期間、綺麗に整えられていた建物。完備されていた食料も家具も消え、全てが夢であったかのような錯覚に襲われる。
もちろん、皆の個室は空っぽ。部屋のすみにはクモの巣が張られ、長らく人が住んでいた形跡もない。
あの空間は、進行人に作られた紗瑛さんの復讐の舞台にすぎなかったんだ。
「本当に……オレ1人が生き残っちゃったのか」
乾いた笑いとともに漏れたため息。
これも、ある意味彼女の復讐なのだろうか。一番連れて行って欲しかったオレを残して……みんなを連れて逝ってしまったんだから。
Sを出て、照りつける太陽に目を細めた。その眩しささえも、生き残ってしまったオレを責めているかのように感じた。
どこにいけばいいんだろう。これから、どうすれば?
警察に行って、樹に関する罪と紗瑛さんを落とした罪を吐露すべきか?だけど、それだけで償えない。オレは、恐らく一生自分自身を許せないから。
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