20XX年3月4日

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じわりと涙が浮かんだ。誰か教えて、誰か助けて……オレはどうしたらいい? 足を運んだのは、旧時計塔校舎。薄暗い廊下を抜け、階段を登り……あの屋上へたどり着いた。 屋上の淵に立ち、下を見下ろす。背筋がゾワりと凍りつくほどの高さ。あぁ、ここから紗瑛さんと樹が落ちたんだ。 「ここに戻ってくると思ってたヨ」 突如、オレの横に現れた進行人。ニコニコ笑いながら座っている。 ……また現れるとは思わなかった。あのゲームが終わった段階で、この少年とは無関係になったはずなのに。 だけど、それは今のオレにとっては好都合だった。 「紗瑛さんは、どうなったんだ?」 一番気になっていた事を聞いてみる。負けが確定した瞬間、紗瑛さんの頭は弾け飛んだ。でも、そもそも彼女は死んでいたわけで。 「そだネ、ボクが作ってあげた身体は潰しちゃったし……魂だけが彷徨ってるかもネ。キミが生き残ったことで、死んだ人の復讐は成し遂げられなかったカラ」 オレが生きてる限り、紗瑛さんの未練は断ち切れない……ということだろうか。それでもなお、生きて償えと言った彼女。そこには、よほど強い覚悟があったのだろうと感じさせられた。 だけど、と心の中で自問する。オレは、そうまでして生きるべきなのだろうか。 考えながら、足が自然とある方向に動いていた。多分、これは願望なんだと思う。オレの足は、オレ自身を屋上の足場ギリギリの位置まで運んでいく。
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