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あと一歩でも踏み出せば、屋上から真っ逆さま。そこまで来た時、ようやく足を止めた。
眼下に広がる街並み。あまりの高さに眩暈がしそうだ。でも、不思議と恐怖は感じない。眩しい太陽に目を細め、静かに佇んでいると……
"死ぬの?"
背後で響いた声。振り返ると、いつかの彼女が立っていて。
「紗瑛さん……」
オレの目から涙が溢れ出た。嬉しかったんだ、また彼女に会えたことが。例え、その姿が幻だったとしても。
"死ぬの?"
再び、彼女が訊ねてきた。心配そうに眉尻を下げ、首を傾げている。オレは問いに答える代わりに、彼女に向かって笑って見せた。
ごめんなさい。折角あなたが与えてくれたこの命なのに。だけど、オレはあなたを彷徨わせてまで生きていたくないんだ。
その気持ちを読み取ったかのような彼女はオレの隣に立ち、悲しそうに微笑んだ。ゲームの最終日、自分自身の恨みからオレを助けてくれた時のように。
"……じゃあ、一緒にいく?"
ふわりと宙に浮いて、綺麗な青い空の中に立つ。彼女は天使のように美しい姿でオレに笑いかけていた。
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