20XX年3月4日

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"ほら、行こう?" 優しい声とともに、オレの方へ差し出された紗瑛さんの右手。 これからは、ずっと一緒に。誰もいないこの世より、彼女がいるあの世で。そう思うだけで、心の中に光が差し込んだ気がした。 紗瑛さんが差し出す手を握ろうと、一歩前に踏み出す。そこには、もう足場はなくて。オレの手は、彼女の手に届くことなく空を切った。 彼女が最期に見たであろう光景。恐ろしいスピードで迫ってくる地面に、オレは目を閉じる暇さえもなかった。 落ちていく中、響いたのは紗瑛さんの高笑い。その残忍さ漂う声は、間違いなく"死んだ人"として復讐をしていた紗瑛さんのもの。 確信した。もう、あの頃の優しかった彼女はいないのだと。存在しているのは……復讐だけを望み、オレの命を奪いにきた"死んだ人"。 そして、なにより。 「復讐完了」 進行人である少年の、囁き声。それは、なぜか……樹のものと重なって聞こえた。 最後の最後まで気付けなかった。 あのゲームは、紗瑛さんの復讐。でも、その影にもう1つ、死んだ人をも利用した大きな復讐が隠されていたなんて。 「……とても楽しかったよ。ボクを苦しめたキミたちの、恐れ苦しむ姿を見ることが出来たのは」
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