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「紗瑛さんも呼ばれていたんですか?」
「優飛くんもなの? てっきり、私だけだと思ってた」
「オレもそう思ってました。 でも紗瑛さんに会えるなら、すっぽかさなくて良かったー!来た甲斐があったっスよ、まじで」
人懐っこい笑顔を向けて嬉しそうに言う優飛くん。彼は、前々からこんな感じ。やけに私に懐いてくれて可愛いんだ。
その時、廊下の奥……トイレの方から水を流す音が聞こえてきた。不審に思っていると、優飛くんが笑顔でこう言った。
「あぁ、透哉さんも来てるんです。今、トイレに……」
「あー、スッキリした。おぅ、紗瑛じゃねぇか。元気そうだなー」
トイレから姿を現したのは、若松 透哉くん。ツーブロックショートの黒髪、長年格闘技をしてきたからか筋肉質で逞しい体つき。
そんな彼は、23歳にして未だに大学生。単位が足りなくて卒業できず、5年生として学部に留まってたんだよね。
でも、優飛くんいわく……
「6年生確定らしいっスよ。透哉さん」
「え、まだ単位足りないの!?」
「ははは。まぁ来年こそは卒業すっからよ。楽しみにしてろや」
うわ、見るからにやる気ない。6年生って、小学生じゃないんだから。
「透哉くん、留年繰り返してたら就活に響くんじゃない?」
「まぁ、透哉さんの場合は根っからの筋肉バカだから救いようがねぇっスよ。スポーツ推薦で奇跡的に入学できた人なんだか……」
「優飛ィィ! てめぇ絞め殺すぞ!」
「いててて! 本当の事言っただけでしょ!」
優飛くんの首を片腕で絞める透哉くん。この2人はいつも反りが合わなくて、よくケンカしてたっけ。
その光景が、なんだか懐かしくて……笑みが広がっていく。こんな風に笑ったの、久しぶりな気がするなぁ。
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