738人が本棚に入れています
本棚に追加
キオク
ーーハァ、ハァ、ハァ。
呼吸が荒くなる。走ってきたせいもあるけれど、何より目の前の光景が衝撃的すぎたから。
満月に照らされたコンクリート。そこに横たわる、ひとつの遺体。
地面に叩きつけられたせいで、頭部が弾けている。そこから液体が流れ出て、赤黒い花を咲かせていた。
もっとはやく来ていれば。
もっとはやく気付いていれば。
どんなに後悔しても、その命は取り戻せなくて。だからこそ、涙が溢れ出て止まらない。
……ねぇ、どうして?
問いかけたところで、答えが返ってくるはずもなく。私は、青い大学ノートを胸に抱えたまま……ある決意を固めた。
私は、この死を忘れてはいけない。私だけが知っている真実を明かすために。
最初のコメントを投稿しよう!