第2章

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 雲ひとつない青空に映える薄ピンクの桜。大ターミナル駅から会社に向かう途中、高層ビル群の間にある区立公園には、ソメイヨシノが咲き誇っている。  4月1日の今日。新たな環境に身を投じる新社会人、私のように部署異動して職場環境が変わる者等、人々を応援するかのように、優しい色合いの景色が心を和ませる。  公園を通り抜けながら、大好きなシダレザクラを探す。ソメイヨシノの方がポピュラーだけど、濃いピンクと流れるような柔らかい姿に魅了されて5年、私は毎年シダレザクラを愛でていた。  公園内に流れる滝を通り越し、桜を写真に収める人々を横目で見ながら、目的のシダレザクラにたどり着く。公園奥のあまり人が来ないベンチの脇に、数少ないシダレザクラの木が一本、ポツンと、だがしっかり花を咲かせていた。  「今年もまた会えたね」  つい、口に出してしまい、ふっと笑う。桜に話しかけてしまった。    
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