第2章

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 ----------------------------------  「藤田さん、おはようございます。異動してきたのにぎりぎりですね。」  顔見知りの高橋君が、ちょっとあきれたように言う。  「おはよう。ごめんなさい、ちょっと道草くっちゃって。私の席は?」  「私と杉山さんの隣ですよ。」  高橋君は言葉遣いが丁寧だ。多少慇懃無礼な気がしないでもないが、これから仕事も教えてもらうから、仲良くしていかなくちゃ。そう思いながら、「杉山さんは?」と尋ねる。  「さっきまでいたけど。給湯室でしょうか。」  そんなこと話していると、杉山玲奈(スギヤマレイナ)ちゃんが現れた。  (うわあ、すっごく可愛い!細い!おしゃれ!お肌きれ~)  付けまつげで目を強調しつつ、薄化粧に桜モチーフのネイル、淡いブルーとイエローの小花模様のワンピースを着こなし、7センチヒールを履いている。  「藤田さんですか?私、杉山です。よろしくお願いします。」  「こちらこそ、よろしくお願いします。玲奈ちゃんって呼んでいいかな?」  「お客様の前でなければ、どう呼んでいただいてもかまいません。」  (ううっ、クールな子だなあ。見た目は可愛いのに)  気を取り直して、「じゃあ、高橋君、玲奈ちゃん。改めまして、藤田直子です。これからどうぞよろしくお願いします。」  私は二人に一礼して、辞令を受けるべく課長席前に集合した。  
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