第2章

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 「はじめまして。藤田と申します。システムは不得手ですが、これからよろしくお願いいたします。」  精一杯の笑顔を作り、ニコッと笑いかける。当たり屋となった朝の出来事は、この際スルー。  「知ってます。」想像していたよりは少し高めの声で、笑顔を返された。  え、朝のことは一瞬だったのに覚えていたの?いやいや。    確かに昨年も同じ課内にいたけど、私は庶務係だったから関わり合いはなかったはず。営業係に顔出した回数は、片手の数で足りるし・・・昨年は主任試験にパスするために試験勉強一筋で、歓送迎会や忘年会など、課内の飲み会にも参加していなかった。それなのに、なんで私のこと知ってるんだろ。  疑問で頭が一杯になりながら、高橋君に2係へ引きずられていった。  (それにしても、小池さんって言うのか・・・)  名前を知ることができたことと、係は違っても同じ業務を担当する偶然に、何だかわくわくし、自然と笑みがこぼれる。かなり自分の好みのタイプ、ドストライクの人と一緒に仕事をする機会を得るなんて、何年ぶりだろう。まあ、私は社内恋愛なんてしないけど。  この時は、ちょっといいなと思う人と仕事で関わり合うことができてラッキー、くらいにしか思っていなかった。
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