第2章

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 ---------------------------------- 4月も半ば過ぎ。春の雨が桜の花を散らし、徐々に葉桜が出現し始めた頃。 私は始めてクレームを言うお客さんの窓口対応をすることになった。繁忙期で周囲は電話や来客に追われていて、一人での対応。緊張はあったが、電話対応は早くからこなし少しは慣れ始めていたため、思い切って一人の窓口デビューである。 「あなたのところの商品を購入したんだけど、ここがおかしいのよ。壊れているんじゃないの?」女性のお客さんのクレームに相槌をうちながら、的確な説明を試みる。20分ほどして納得し、帰っていったお客さんの後にも次から次へとお客さんが来る。 「ちょっと、ごめんなさい。このことについて質問したいのだけど」品のいいお婆さんが、メモを片手にやってきた。内容は、1係と3係に関わることのよう。まず、問題を説明してから、1係につなごうとしたが、フロアはお客さんであふれかえっている。3係にも順番を待つお客さんがいたため、仕方なくお婆さんに1係から説明して欲しい内容を記載したメモを持たせ、キャビネットを挟んで向こう側にある1係の窓口を案内した。 その10分ほど後、私が別のお客さんとの対話を終えた時、おばあさんがメモを持って3係に帰ってきた。それを見ると、1係で説明を終えたが、3係で説明して欲しいことが書かれていた。繊細で丁寧な文字。ふと1係を見ると、小池さんが窓口当番のようで、他のお客さんと対応していた。
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