第2章

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 (もしかして、小池さんが対応してくれたのかな・・・)  お客さんの利便性も考え、窓口が混んでいるときは、自分の係の範疇でなくとも分かる範囲で他係の説明を行うのは、暗黙の了解とされている。営業1~3係で別々の業務を担っていると説明しても、「たらい回し」「また並びなおすのか」と不満を述べるお客さんも存在するからだ。  しかし、私は異動してきたばかりで、慣れない事もあり、1係につないでしまった。それ自体は間違いではないのだが、お客さんを回された社員によっては「今は繁忙期なんだし、これくらいの対応はそっちで調べて完結させてよね」と文句を言う人もいる。主に女性社員なのだが・・・  「社員にクレーム付けられずに助かった」と思う反面、他にもお客さんが待っていたため係を離れられず、メモ書きでやり取りをせざるを得なかった私と同じ方法で対応してくれた彼に、ちょっと興味を覚えた。  それにしても、(忙しいのにきれいな文字を書くんだなあ・・・)  自分の殴り書きメモを見られたことへの羞恥心を覚えながら、余裕がない自分とは対照的に次々とお客さんをさばいていく彼の姿をチラッと横目で眺めた。  
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