第3章

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 (誰だろ・・・私以外にも休日、しかも連休中日に出勤する奇特な人が、この課にもいるのね。)  (ともあれ、一人じゃ寂しかったから、同士ができたみたいでうれしいな。) そう思いながら、顔を上げ、通路の向こうに目をやる。 (えっ?)  歩いてくるのは、小池さんだった。いつもの飄々とした雰囲気。でも、なんだか雰囲気が違う。  (あ、スーツじゃないんだ!)  黒のジャケットに白シャツ、色落ちデニムにスニーカーと、ラフな格好の中にも清潔感がにじみ出ている。オフの彼を初めて見て、なんだか頬が緩む。(休日出勤のご褒美かしら。)   「藤田さん、おはようございます。早いですね。」 彼は3係のカウンター横から中に入り、私の近くまでやってきた。  「び、びっくりしました。小池さんもお仕事残っているんですか?」  動揺を顔に出さないように気をつけながら、ハッと思い出し、慌てて身なりをチェックする。休日出勤で誰もいないと想定してたから、部屋着に毛が生えたようなファッションだ。ふんわりとした若草色のチュニックにベージュのチノパン、ペタンコ靴。鎖骨まである黒い髪はくせっ毛で、自宅にいる時と同じように、シュシュで一つに束ね、化粧は日焼け止めのみである。  (恥ずかしい!)  油断した格好を、ちょっと気になっている人に見られてしまったショックから、まともに目が合わせられない。
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