第3章

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 --------------------------------- 「よーし、終わったあ!」 思わず、声に出してしまっていた。12時半過ぎ。あれから3時間ほど無心でパソコンと向かい合っていたことになる。 休日出勤のいい所は、お客さんもこないし電話もならず、人も少ないため、仕事がはかどる点だ。最初は、キャビネットの向こうが気になって集中できなかった私も、徐々にスイッチが入り、高橋君からの宿題を思ったよりも早く終わらせることができた。 (いい天気・・・)窓の外を眺めながら思う。通り向かいも高層ビルというありがたくない景色だが、朝の分厚い灰色雲はどこにいったのか、爽やかな5月の青空にちょこちょこと白いふんわりした雲が浮かんでいる。 (お腹すいたし、後片付けして帰るかな) 「ぐーっ」とお腹が鳴った。 「プッ。」くすくすと笑い声が聞こえ、思わず振り返ると、小池さんがこちらに向かってくる所だった。 「えっと、あの、聞こえました?」私は赤面ものだ。 「ええ、『終わったあ!』ってうれしそうな声が聞こえたから。」 自身もキリが良かったのか、声をかけにきてくれたらしい。そこに、この失態。 穴があったら入りたい私だったが、ふと思いついて顔を上げる。
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