第1章

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 私が異動する3係より、さらにエレベーター側に1係と2係がある。通路の端の方からカウンター越しに中を覗く。 「晴美ちゃん、どの人?」 その時、ふっと私の横を通り過ぎ、カウンターの中に入っていく後姿が眼に入った。30代くらいだろうか?長身の体を少し曲げて前かがみに歩く姿。少し影がある、全体的に多少暗いけど、飄々とした雰囲気を纏っている。 思わず、目を奪われた。 (あの人かな?) 「直子さん、あの人です。奥の机で電話対応している人。」 晴美ちゃんの声にハッとして、示された方角に目をやる。20代半ばくらいの色白で軟派っぽい青年が、電話でなにやら話していた。 「遠目でよく分からないけど、女の子にモテそうな感じだね。晴美ちゃんがああいうタイプが好きなのは、なんだか意外だな。」 「直子さん、シーッ。声が大きい。」
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