嘘はよくないと思いますよね。

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「長瀬(ながせ)好きだ」 と放課後の教室で先生は私、長瀬湯女(ながせ、ゆな)に言った。生まれて初めての告白に戸惑う私を、恥ずかしがっていると勘違いした先生が私のそっと抱き寄せた。大丈夫と耳元で囁かれ耳がカッと熱く火照る。 「長瀬、これは僕と長瀬の秘密だよ」 と言われ、そっと彼の唇が私の唇に重なった。初めてのキス、離れられないように腰に手を回されギュッと力強く先生を感じた。大人の男性、汗の匂いに頭がクラクラして、まともな思考ができない。 私は生徒で、先生は、学校の先生なのにと戸惑う私にさらに先生はキスをしてくる。ここで拒否したら先生はきっと怒るだろう。先生は、優しい人だけれど、怒ると別人になったと錯覚するほど怖いのだ。それだけは嫌だった。先生のシャツをギュッと握りしめて先生とのキスを繰り返した。 先生との逢瀬は、その後も続いた。誰もいない時間や場所を選んで、私を強引に抱き寄せてキスをした。最後に、これは僕らの秘密だよと言う。 「先生、ちょっと恥ずかしいで」 「そういう長瀬も僕は嫌いじゃないよ。さぁ、長瀬、僕と君の仲だろう? 見せてごらん?」 先生のニコニコとした笑顔に逆らえず、私は制服を脱いで、大切な物を失った。痛くて、辛くて、悲しくてでも、先生が優しく抱きしめてくれると思えば我慢できた。先生との秘密だから。 授業中も、家に居る時も先生のことばかりを考えるようになってしまった。一人で自分の胸を抑えてそっと撫でる。ンッと声が漏れてビクッとと身体が揺れた。 「せんっ、せい、これは恋ですか?」 先生は私のことを何度も好きだと言った。きっと先生は私に恋している。私は子供なのにと不思議で、けれど、胸が温かくなる。 『先生は、嘘を吐く子は嫌いだよ。嘘はいけないことだからね』 私も嘘は嫌い。おじいちゃんも、嘘は泥棒の始まりだから、湯女も素直でいい子になるんだよと口癖のように言っていたから、 「私もちゃんと先生に好きって言わないといけないのかなぁ」 夜空がとても綺麗だった。明日、先生に告白しよう。そして正式な恋人同士になってみんなに打ち明けよう。 「秘密にし続けることは、嘘を吐くのと一緒だからね」 窓辺で夜空を見上げながら、先生も同じ空を見てるといいなと、微笑んだ。 その日はきっとステキな一日になる。先生に早く自分の気持ちを告白したくて、朝早く学校に登校して、ドサッとカバンが地面に落ちる。
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