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「……南條だけの頼みを聴くわけにはいかない」  断れないということは、少女の瞳を見れば分かった。  だが正臣は最後の抵抗の言葉を吐く。 「俺は、『合志』の姓を継ぐ者だから。だから、どこに肩入れをする訳にもいかない。店で出した料理の代金以上の金を受け取ることもできない」  茶封筒の中身が札束であるということは、中を見なくても封筒の厚みを見れば分かる。  だからこそ、正臣は封筒に手を付けなかった。  受け取り拒否を示すために腕を組み、友和を睨み付ける。 「俺の所に、争いの火種になるような物を持ち込むな」 「あ~……」  正臣の語気から言わんとすることを悟ったのだろう。  力なく呻いた友和がガシガシと頭を掻きむしる。  だがその見せかけだけの葛藤は長くは続かなかった。
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